SPC(Special Purpose Company)
SPCとは不動産証券化する不動産の買主であり、資金調達の主体であり、証券の発行体でもあります。
不動産所有者オリジネーター)から所有権を移転し、移転のための資金を調達し、
証券を発行して回収を図る一連の流れを不動産流動化と言います。
また、オリジネーターは、自身が不動産証券化のニーズを持つ者である場合が多いため、
SPCに自ら出資をするスポンサーを兼ねるケースが多いです。
SPC(SPV)の種類
中継ぎであり、受け皿のような役割のSPCには根拠法(根拠となる法律)に応じていくつか種類があります、
1
GK-TKスキーム
このスキームの根拠となる法律は「会社法」になります。
合同会社(GK)が証券の発行主体であり、資金調達者となり、銀行と匿名組合(TK)から借入・出資を受けるスキームです。
合同会社は株式会社と違い、「会社更生法」の適用がありません。
また、取締役や監査役の設置が不要であり、決算公告義務も無く、最低資本金制度も無いため総じて簡便性が高いです。
デメリットとしては、合同会社社員の持分への利益配当は課税対象となるため、二重課税が発生することにあります。
匿名組合員への配当は損金算入出来ますので二重課税を回避できます。
また、有限会社と違い合同会社は所有・経営が不分離、一体化しています。
つまり、出資者以外は業務執行社員になれないということになります。
★GK-TKスキームで、GKがTK出資持分の取得者から集めた金銭を「有価証券」で運用する行為は、
金商法2条8項15号に規定する「自己運用」と呼ばれる「投資運用業」の一つです。
自己運用を行うGKは、運用登録が必要になりますが、導管体である合同会社に登録費用の負担をさせるのは難しいです。
そこで投資運用業登録業者一任契約を締結し、「適格機関投資家等特例業務」として届け出ることで、
「自己募集」(自己私募)と「自己運用」を運用登録無しで可能にする方法があります。
※適格機関投資家等特例業務の要件として、参加組合員が適格機関投資家、
または一定の条件を満たす一般投資家の49名以内で構成されている必要があります。
適格機関投資家特例業務の届出者も、契約前締結書面の交付義務等の行為規制は適用される為注意が必要です。
2
TMK(特別目的会社)スキーム
TMKの根拠法は「資産流動化法」になります。
TMKの大きな特徴は税制面で有利であることで、配当所得の損金算入が可能です。(つまり、二重課税を回避することが可能です。)
デメリットは、根拠法が資産流動化法である為、対象不動産の流動化に関わる業務しか取り組めないことです。
TMKの役員はオリジネーターやスポンサーと関わりが無い者である必要があります。
TMKは資産流動化業務を行う場合、予め内閣総理大臣に届け出なければなりません。
3
REIT
GK-TKスキーム、TMKスキームを「資産流動化型」(モノありき)と呼ぶのに対し、
REITは「資産運用型」(カネありき)と呼ばれます。
前者の主な目的が倒産隔離、所有権・受益権の移転であることに対し、
後者は運用による配当金の分配(対株主)が主な目的になるので、
証券化対象の不動産の入れ替えが(ポートフォリオの再構築)多くなります。
よって根拠法は資産流動化法ではなく「投信法」となります。
★2008年から海外不動産への投資が解禁されました。
借入(デット)と出資(エクイティ)
イレギュラーはありますが、基本的にエクイティはデットに「劣後」します。
つまり利益は先ず借金の返済に充てられ、その後に出資者へ分配される、という考え方です。
これはノンリコースローン(有限責任、対象不動産の売却額以上の請求はないローン)である以上当然ではありますが、
エクイティ出資者からの売却時期や適正な売却価格を逸脱した売却の圧力を避ける効果もあります。
SPC自体の倒産防止対策
SPCが倒産してしまう事は出資者をはじめ、ステークホルダーに大きな損害をもたらします。
SPCの執行業務内容を制限し、「導管体」としての役割に特化させることも勿論ですが、
SPCの役員や議決権者が「計画倒産」に走ることのないように独立した第三者、「見届人」を用意する以下の仕組みがあります。
ケイマン島(タックスヘイブン)で設立したSPCにオリジネーターが出資し、
そこから国内のSPCに出資する形を取ることでオリジネーターと国内SPCから議決権を排除します。
ケイマンSPCの取締役には、現地のトラスティーサービス提供会社の社員等が就任します。
一般社団法人
出資金のフローはケイマンSPCを一般社団法人に置き換えたモノです。
つまり一般社団法人が中間法人となることで、拠出者と議決権を持つ社員の分離が可能となります。
(一般社団法人に議決権を持たせることでSPCが能動的に倒産することを防止します。)
継続的関与と5%ルール
資産の流動化において重要なのは「真正売買であること」です。
資産の流動化とは譲渡人(オリジネーター)のバランスシートから資産を切り離す事ですので、
真正売買と認められていなければ本来の目的が達成できなくなります。
真正売買か否かを判断する際に、オリジネーターが切り離した資産に対し、「継続的関与」があるかどうかを検証します。
★継続的関与の具体例
譲渡人が譲渡した不動産の管理業務を行っている
譲受人(SPC)が譲渡人に対して売戻権を持っている
譲渡人が譲受人に対して買戻権を持っている
譲渡人がセールスアンドリースバックによって、譲渡した不動産を継続的に使用している
これらのいずれかに該当する場合は例外なく真正売買として認められない、としたのであれば資産の流動化の難易度が非常に高くなってしまいます。
そこで、リスク負担割合(流動化する不動産の譲渡時の適正な価格(時価)に対する譲渡人のリスク負担の金額の割合)
がおおむね5%の範囲内であれば、リスクと経済価値のほとんどすべてが他の者に移転しているとみなされ、
その譲渡は真正売買として会計処理ができるというルールがあります。
(5%ルール)
※資産の流動化において、譲渡行為を担保取引(譲渡担保)とみなされるリスクがありますが、
「移転行為自体を否認されるリスク」は真正譲渡性の議論とは別となるので注意が必要です。
不動産賃貸借契約
敷金の取り扱い
賃貸不動産の所有権が移転した際の敷金返還債務は、一般的に新所有者へ移転する為、
旧所有者はテナントの承諾を得なくても免責新所有者へ請求してください)されます。
また、売主ー買主間では返還債務の移転に伴い、売買代金から返還債務合計金額(預かり敷金合計金額)を差し引いて、精算するのが定石です。
賃貸人の地位移転
所有権移転の場合、賃貸人の地位もまた、テナントの承諾を得なくても当然に移転すると考えるのが一般的です。
(それ以外の場合は賃借人の承諾を得る必要があります。)
なお、地位は当然に移転するものの、実際に新所有者がテナントに賃料を請求するためには所有権移転登記を備える必要があります。
★信託譲渡やセールスアンドリースバックの場合も同様に、テナントの同意は不要とされています。
マスターリース契約
信託を設定する場合、オリジネーター(不動産所有者)とテナントとの間で締結している契約を不動産賃貸借契約、
オリジネーターと信託受託者の間や信託受託者とマスターレッシー(信託受託者の一括賃貸先)の間で締結している契約をマスターリース契約と言います。
改正民法では、信託の設定に際しマスターリース契約が締結される場合、テナント承諾は必要とされ、(賃貸借から転貸借となるため)
マスターリース契約が終了した場合、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人へ自動的に移転するとされました。
(マスターリースの終了は、合意解除、債務不履行解除いずれの場合も含みます。)
中途解約の違約金
主にオフィスにおける賃貸借契約になりますが、残存期間の賃料相当額を違約金とするケースが特に証券化不動産では多いです。
(配当金の源泉である賃料収入が途切れることは最大のリスクである為)
また、住居の賃貸借契約は通常契約期間が2年であるのに対し、オフィスは最長の20年に設定されることも多いです。
なお、中途解約は賃借人との合意の下で期中解約権の排除という特約をつけることで禁ずることも可能です。
解約権は特約の有無に関わらず当然に行使できるわけではなく、賃貸借契約で契約期間を定めている場合、行使の前に解約権の留保が必要です。
賃貸人は定期借家契約の契約期間に関わらず、1年から6ヶ月前に終了通知をしなければ、契約の終了を賃借人へ対抗できません。
賃料増減請求権
通常、賃料の増額請求権は排除出来ても、減額請求権は排除出来ないとされています。
しかし証券化において、ただ賃料の減額リスクだけを負うことは好ましくない為、
双方排除できる「定期建物賃貸借契約」(更新のない賃貸借契約)を締結することで解決するケースが多いです。
※普通賃貸借契約、定期建物賃貸借契約に法的拘束力の違いはありません。
破産手続きの開始
賃貸人に破産手続きの開始があった場合、賃借人は敷金返還請求権の額の限度で、
賃貸人に対して支払われる賃料相当額を寄託する(相殺する)よう請求することが出来ます。
対して賃借人に破産手続きの開始があった場合、破産管財人からの賃貸借契約解除権が認められる以上、
賃貸人から一方的に契約解除をすることは出来ないと解されています。
信託契約
信託を利用した不動産証券化は、所有権が受託者に移転し、保有されます。
(登記事項には受託者だけでなく受益者の名前や信託管理人といたステークホルダーの情報が記載されます。)
受益者の保有する権利を信託受益権といい、
信託財産から発生する利益を受け取る権利は勿論、不当な処分(売却)の取消権が認められています。
(金融商品取引法上の有価証券とみなされています。)
受益権も法律上の譲渡性を有している為譲渡が可能ですが、これには受託者の承諾が必要とされています。
信託受託者は、信託業務をアウトソーシングする事が可能ですが、委託先信託契約上で明らかにする必要があります。
信託業務の受託者は、信託受託者同様に忠実義務や善管注意義務を負いますが、単なる保存行為に関わる業務等は範囲外となります。
信託受託者が不動産の売主となる場合も、不動産業者が売主となる場合と同様に契約不適合責任を負わない旨の特約は無効です。
信託財産は所有者から独立するため、債権者は強制執行や競売といった行為をすることができません。
ただし、債権者を害することを知ってした信託(詐害自己信託)の財産は強制執行や競売といった行為が可能です。
宅建業者が自ら取得した信託受益権を販売する場合、
重要事項説明の義務はありますが、第二種金融商品取引業の登録をする必要はありません。
第二種金融商品取引業者が不動産信託受益権の取り扱いをする場合、
宅地建物取引の専門的知識を有する役員や使用人を内部監査部門に配置する必要があります。
また、宅建業者が信託受益権を販売する場合、個人に対しては重説義務がありますが、
自己信託
オリジネーター自らが信託受託者となり、受益権をSPC等に処分する自己信託という方法も存在します。
自己信託の場合の「信託業登録」の要否ですが、受益者が50人未満の場合は登録不要となっています。
この自己信託において、受益権の全部を固有財産で1年を超えて保有することはできない、とされています。
(一年を超えて保有する場合、信託は終了します。)
現物不動産のオリジネーターが信託受益権を自ら販売する行為は金融商品取引行為には当たりません。
(第二種金融商品取引業に該当しません。)
★信託財産は独立しているため、信託委託者や受益者の債権者等は債権保全のため信託財産の差押さえ等をすることができませんが、
自己信託の場合債権者を害すると知った上でした信託については詐害行為とみなされ、
債権者はその信託財産の差し押さえが出来る事とされています。
信託財産責任負担債務
例えば受託者が締結した信託不動産における賃貸借契約上の債務(Ex:敷金返還債務)は信託財産責任負担債務であり、
受託者の固有財産も責任財産となります。(逆に、受託者の不法行為責任も信託財産が負うことになります。)
信託財産限定責任負担債務
文字通り、受託者の固有の財産に責任が及ばない負担債務を指します。
(通常の信託における受託者は債務超過があった場合固有の財産をもって弁済等する義務が発生します。)
投資法人
投資法人は、その資産(特定資産)の運用以外の行為を営業としてすることが出来ません。
可能な業務
有価証券・不動産の取得、譲渡、貸借 不動産管理の委託
※新築工事、増築やリニューアル工事の発注者・注文者となる事も可能です。
制限事項
また、本店以外の営業所を設けて使用人の雇用をすることも出来ませんので、
その資産の運用に関わる業務を資産運用会社(AM)に委託しなければなりません。
(この資産運用会社は「金融商品取引業者」である必要があります。)
また、投資法人は配当の分配・払出等の事務についても一般事務受託者に委託しなければなりません。
(特定目的会社の場合は支店の設置や使用人の雇用が可能なので混同しないように注意が必要です。)
特定資産
特定資産とは有価証券、不動産賃借権・地上権などで、その範囲が規定されています。
また、2014年の法改正に伴い、特定資産に再生可能エネルギー発電設備及び公共施設等運営権が追加されました。
登録と役員
投資法人は「内閣総理大臣の登録」を要します。
(資産運用会社が金商法上の登録をしていますが、投資法人もまた登録が必要です。)
投資法人の役員会は執行役員1名に対して監督役員2名以上である必要があります。
執行役員の任期は最長2年、監督役員の任期は最長4年です。
★投資法人規約
※投資法人規約の変更投資主総会特別決議事項となります。
規約の例としては以下のものがあります。
  • 投資主の請求により投資口の払戻しをする旨又はしない旨
  • 投資法人が常時保持する最低限度の純資産額
  • 資産運用の対象及び方針
  • 資産評価の方法、基準及び基準日
  • 金銭の分配の方針
  • 執行役員、監督役員及び会計監査人の報酬に関する事項
  • 資産運用会社に対する報酬に関する事項
★投資法人決議事項等
1
投資主総会の承認決議事項
・資産運用委託契約(AM契約)の締結
2
役員会の承認決議事項
・投資法人と資産運用会社の利害関係人等との一定の重要な取引(軽微なものを除く)
決算の承認
(投資法人の運用計画や成績は投資法人や資産運用会社に委ねられているという事です。)
3
投資主の承認決議事項
・投資法人の合併(投資主の三分の二以上の賛成)(特別決議
※合併が適格合併であれば資産を簿価で承継、非適格合併であれば資産は時価で評価し直します。
投資法人の執行役員解任(普通決議)※議決権数を規約で加重することが出来ます。
上場リート
2001年9月に初めて東証に上場されました。
また、2008年5月より海外不動産への投資も可能となりました。
上場株式と同じように投資口の払い戻しがない「クローズドエンド型」になります。
これは上場制度によって投資口の換金性を保証している(第三者へ売却する事でのみ、投下資本の回収が可能)という事になります。
J-REITの上場審査基準において、委託する資産運用会社(AM)が一般社団法人投資信託協会の会員であることが必要です。
・J-REITの上場手続き
資産運用会社にて、①宅建免許取得 ②取引一任代理等に係る認可※ ③金商法の投資運用業登録の手続きを行います。
投資法人は設立企画人が内閣総理大臣への届出を行い、東証の上場審査を経てJ-REITの上場となります。
※「取引一任代理等に係る認可」とは、金融商品取引法に基づき、投資一任契約投資顧問契約の締結を顧客の代理として行う業務に関して、金融庁の認可(登録)を受ける必要がある制度です。この制度は、投資運用業者や投資助言業者と顧客との間で契約を締結する際に、第三者がその契約の代理や媒介を行う場合に適用されます。これは、投資家保護の観点から、契約の適正性や透明性を確保するために設けられています。
・J-REITの合併手続き
投資法人の合併には投資主の2/3以上の賛成(特別決議)が必要です。
※みなし賛成制度は対立する議案が提出されたときには使えないため、
敵対的買収(TOB)などで対立した議案が提出されるときにはみなし賛成制度は使えない事に注意が必要です。
私募リート
主として投資口の払い戻しを行う「オープンエンド型」になります。
※あくまで払い戻しは任意。限度額の設定も可能。
私募リートでは投資口の価格が株式市場の影響を受けにくいとされており、
(鑑定価格をベースとするため、より不動産への直接投資に近しくなり、上場リートよりも分散投資効果が得られる)
金融市場や不動産市場の短期的動向に左右される事なく売却時期を設定できるメリットがあります。
また、非上場のREITですので、私募REITには金商法のインサイダー取引規制が適用されません。
市況としては、上場REITの保有資産額が約22.5兆円であるのに対して、私募REITは約5.6兆円の規模となっており、
投資家で最も多いのは地銀で、35%程度を占めております。
私募で投資口を発行し、6ヶ月以内に上場申請する場合、
投資口の割り当てを受けたものとの間で上場以後6ヶ月は継続所有することを書面で合意する、
かつ東京証券取引所に提出する必要があります。(投機的な取引を防止する為)
・投資主総会
規約に別段の定めのある場合を除き、投資口過半数の投資主が出席し、その出席した投資主の議決権の過半数をもって決議を行います。
ただし、投資法人は規約によって、投資主が投資主総会に出席せず、
かつ議決権を行使しないとき、投資主はその投資主総会に提出された議案について賛成するものとみなす旨を定めることができます。
★みなし賛成制度(REIT、TMK共通)
この規定による定めに基づき議案に賛成とみなした投資主の有する議決権の数は、出席した投資主の議決権の数に算入されます。
ただし、複数の議案が提出された場合において、
これらのうちに相反する趣旨の議案があるときは、当該議案のいずれをも除くとされています。
・資産運用会社(AM)
投資法人はその資産の運用を外部に委託する必要があります。
資産運用会社は、内閣総理大臣の登録を受けた金融商品取引業者でなければならず、
運用資産に不動産が含まれる場合、宅建免許が必要です。
さらに、主として不動産に対する投資として運用することを目的とする投資法人の資産の運用を行う場合は、
取引一任代理等の認可を必要とします。(投資法人は自ら不動産運用をする設計では無い為)
また、資産運用会社は、複数の投資法人から受託が可能ですが、
利益相反の問題等もあるため大半の資産運用会社は1つの投資法人の資産運用業務のみを行っています。
(なお、資産運用会社の代表者が受託先の投資法人の執行役員に就任する事は特に禁止されていません。)
利益相反の問題等に関する方策として資産運用会社の親法人から投資法人が不動産を取得する場合、
資産運用会社はその取引に先立ち、自社の社内規定に基づく意思決定プロセスに沿って審議及び決議をする必要があります。
資産運用会社の選定は投資主の決議事項に含まれますが、一般的に投資法人の登録に先行して資産運用会社は決定するので、
投資主が資産運用会社との委託契約締結に関して議決権を行使する事はレアケースです。
・利害関係人の範囲について
投資法人の資産運用会社及びその取締役、会計参与、監査役、執行役員、使用人
投資法人の執行役員、監督役員及びその親族
これらの利害関係人については不動産取引に関して規制があります。
資産運用会社の子会社は規制対象ではありませんので混同しない様注意が必要です。)
★投信法にはunknown linkがありません。(金商法で縛っているため)
★投資法人の導管性要件:事業年度終了時に50人以上or機関投資家のみで投資口を保有している事、
特定資産の帳簿価額が総資産の2分の1相当額を超えている事
資産流動化法
・資産流動化の定義
「資産の流動化」とは一連の行為として、
特定目的会社が資産対応証券の発行若しくは特定借入れにより得られる金銭をもって資産を取得し、
資産の管理及び処分により得られる金銭をもって、資産対応証券、特定借入れ又は出資について同法に定める行為を行うことをいう。
資産流動化法第2条2項 抜粋)
TMK(特定目的会社)
資産流動化法に基づき、その資産の流動化のみを目的とする法人です。
投資法人と同じく、他の業務を営むことは出来ない(他業禁止)とされています。
このように、TMKは既に資産流動化法による制約を受けていますので、宅建業法の適用を受けません。
(資産流動化の為に作られるのがTMKですので、「売主なので宅建免許不要」というニュアンスです。)
モノありきのスキームですので特定資産の追加は従来出来ませんでしたが、平成23年度改正法に伴い、
利害関係人全員の承諾を得て資産流動化計画(ALP)変更の届出をすることで追加できるようになりました。
この時、現物不動産を追加資産とする場合は既存の特定不動産との密接関連性が必要です。
つまり、信託受益権を追加資産とする場合は密接関連性は必要ありません。
また、TMKが信託受益権に投資する場合は自己運用行為に当たりませんが、GKの場合は自己運用行為となります。 理由として、自己運用行為とは、
金商法上の集団スキーム持分(例:TK出資持分)を有する者から出資を受けた者が信託受益権に投資した場合等を指しているため、
資産流動化法を根拠法とし、信託受益権に投資するTMKは該当せず、GKの場合は該当する、という事です。
特定資産(信託受益権を除く)を取得、賃貸、分配する場合特定資産管理処分受託者に対して業務委託する必要があります。
特定目的会社には「特定社員」と「優先出資社員」が存在し、特定社員の権利は劣後します。
特定出資
発起人の出資(特定社員。議決権アリ、譲渡制限アリ
優先出資
特定出資より優先される(優先出資社員。議決権ナシ、譲渡制限ナシ
※優先社員に議決権は無いものの、TMKが投資助言契約を締結する場合、優先出資社員が投資判断を行う建付にすることに問題はありません。
特定出資は必ず発行する必要がありますが、優先出資は任意です。また、優先出資社員は金銭以外の財産による出資は出来ません。
特定借入の借入先は適格機関投資家、銀行に限定されています。
特定目的会社の発行する証券は「第一種金融商品」として扱われます。
特定目的会社の場合、届出により(金融商品取引業者の登録は不要)「自己募集」が可能です。
(特定目的会社に特定資産を譲渡する者は優先出資証券の私募の取り扱いが可能ですが、金商法上の届出が必要です。)
このとき、オリジネーターが優先出資の勧誘行為は出来ますが、
特定目的会社の取締役や監査役に就任する事は出来ない点に注意が必要です。
※特定目的会社は関連者などに係る純利子支払等の課税の特例適用対象から除外されています。
※特定目的会社は資本金1億円以下の中小企業に認められている法人税の軽減税率適用がありません。
特定目的会社は取得物件の売買契約締結後に業務開始の届出をする必要があります。
特定目的会社は資産の流動化に係る業務を行うときはあらかじめ資産流動化計画を監督官庁に届け出なければなりません。
資産の流動化に係る業務が終了(優先出資への配当や債務履行を終える)した場合は30日以内に終了届出をする必要があります。
資産流動化計画において予定されている資産の入れ替えは反復継続とはみなされないとされています。
組合契約
組合契約とは主流なエクイティの調達方法になります。
組合員持分は「集団投資スキーム持分」と呼ばれ、「みなし有価証券」に分類されます。(第二種金融商品取引業)
任意組合(民法)
出資財産は任意組合の財産になります。(出資に応じた持分を取得)
つまり組合員の共同事業であり、割り勘で不動産オーナーになるイメージです。
よって組合の債務について無限責任を負います。
組合員と業務執行組合員で構成され、常務については各組合員が単独で、
対外的代表権を有するのは業務組合員となります。
匿名組合(商法)
出資財産について組合員自体は持分を持たず、処分権も有しません。
営業者の単独事業に対して出資する株主のようなニュアンスです。
また、業務執行権もありません。(営業者に業務を任せます)
よって、匿名組合員の損失負担は出資した財産の範囲内に限られます。(有限責任
また、匿名組合の債権者は、匿名組合員個人に対して請求することは出来ません。
また、匿名組合員が破産手続開始の決定を受けた場合は匿名組合契約は終了し、出資価額の請求権のみが残ります。
(この場合、事業の終了までは出資価額の返還がなされない劣後特約が附帯される場合がほとんどです。)
匿名組合員が個人の場合、受け取る利益は雑所得になります。
業務執行権、対外的代表権は営業者のみが有します。
投資事業有限責任組合(有責組合)(特別法)
機関投資家用の組合事業です。
現物不動産の取得、売買はできません。
(集団投資スキームや信託受益権は可能です。)
※有限責任組合員と無限責任組合員が混在し、無限責任組合員が業務執行します。
不動産特定共同事業法
所謂「不特法」は、不動産「小口化」商品の投資家を保護するために施行された法律です。
(しかしながら施行された頃には「不動産証券化」がブームとなっており、不特法の適用除外とする為にYK-TKスキーム(後のGK-TKスキーム)が生み出される事になりました。)
証券化と違い、小口化は「割り勘」での購入に近しい為、一口あたりの金額が高額です。
その為、オーガナイザーである不特法事業者の許可要件は資本金額、純資産額をはじめ厳しいものとなっております。
不特法は資産流動化法、投信法と異なり、あくまで「不動産」に関する法律であり、「信託受益権」には適用がありません。
(不特法の適用除外とするために信託受益権化するケースが増えた、という背景もあります。)
また、本法の「不動産」には海外不動産も含まれています。
★事業者には開業に際する許可の取得と不特法契約成立前の書面交付義務が課されています。
●事業者内容
1
第①号事業
不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる利益の分配。(資本金1億円以上)
2
第②号事業
第一号事業に関わる契約締結の代理または媒介。(資本金1,000万円以上)
3
第③号事業
特例事業者に委託されて不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引。(資本金5,000万円以上)
4
第④号事業
特例事業者が当事者である不動産特定共同事業契約締結の代理または媒介。(資本金1,000万円以上)
各証券化スキームの証券発行体が、「不動産特定共同事業者」になるという考え方がシンプルです。
不動産特定共同事業には、任意組合、匿名組合型の他に、
賃貸型(テナントと共同事業者がサブリース、共同事業者と投資家がマスターリース契約を締結)もあります。
不特法に基づく事業(特例事業)を実施する場合、特例事業者であるSPCは事業実施のための許可は不要で、届出で足ります。
一方で、特例事業のための不動産取引に係る業務及び契約締結の勧誘業務について、
それぞれの業務に関して、許可を受けた不動産特定共同事業者に委託しなければなりません。
この場合、不動産取引の委託先は一つに限り、第三号、第四号事業者への委託が必要となります。
特例事業者は、宅地建物取引業の営業許可や取引士の設置は不要ですが、
みなし宅地建物取引業者として、営業保証金の供託、受領手付金額の制限などの業務規制が課せられています。
なお、特例事業者と締結した不動産特定共同事業契約に基づく権利は、通常の不動産特定共同事業契約に基づく権利と違って、
金融商品取引法のみなし有価証券とされ、その取引について同法の規制が準用されます。
特例事業者は不動産業をしているだけですので金商法の規制は適用されません。)
★不特法の損失補填に関する禁止規定は金商法を準用しており、法令違反による損失補填については禁止の適用はないとしています。
また、適合性の原則も同じく金商法から準用されます。
また、特例事業投資家には損失補填・自己取引といった不動産特定共同事業者に課せられる行為規制がありません。
●不動産特定共同事業契約ではない契約
事前販売型以外の賃貸借契約型契約の場合
(既に共有持分で保有されている不動産の賃貸借契約型契約は不動産管理に過ぎないので、不動産特定共同事業契約ではありません。)
事業参加者が外国投資家のみである場合
単なる利益の分配のみである場合(Ex:ホテル施設の収益分配)
※ホテル運営者へ「賃貸」し、家賃収入を分配する行為は「賃貸型の」不特法事業に該当するため、注意が必要です。
賃貸借契約等不動産取引から生じる利益の分配でなければ、たとえ不動産共有持分を販売したとしても不特法には当たらず、
集団持分スキームの権利を販売する事となり、第二種金融商品取引業の取引行為となります。
★不特法は2017年の法改正により出資総額が一定規模以下の場合許可を不要とする制度ができました。
小規模不動産特定共同事業というカテゴリで登録制となりました。)
ー小規模不動産特定共同事業
1口100万円以内、出資総額1億円以内
・小規模第二号事業:上記に加えて合算して10億まで受託可能。
・信託型の廃止:取得した共有持分を信託する場合は不動産特定共同事業に該当しません。
★2013年に改正された不特法上の特例事業ではSPCが現物不動産取得のために匿名組合出資を受けることが出来るようになりました。
また、特例投資家(プロ投資家)への契約締結義務が無くなったのも変更点の一つです。
なお、適格特例投資家のみが事業参加者となる場合(適格特例投資家限定事業)は不特法の許可は不要ですが、
監督措置の対象にはなります。
金融商品取引法
★金融商品取引業者は説明義務の中に適合性の原則を反映させ、
顧客に対して財産、知識、経験の状況及び目的に照らして説明を行う必要があります。
また、虚偽告知や断定的判断の提供の禁止、書面交付義務が課せられています。
※金販法:重説(口頭でも可能)と勧誘方針策定義務があります。許認可は不要ですが、説明責任を負います。
※金融商品仲介業者は書面交付義務がありません。(金融サービス法)
※金融商品取引業者は契約締結前交付書面・締結時交付書面のコピーを保存する必要があります。
(保存を欠いた場合刑事罰の対象となります)
・みなし有価証券
不動産信託受益権」は金商法上のみなし有価証券に該当します。
・集団投資スキーム持分
金商法では匿名組合員の有する権利(持分ではない)を集団投資スキーム持分と表現しています。
1
第一種金融取引業
(兼業規制アリ)(最低資本金5,000万円)
伝統的な有価証券に関わる業務(売買、売買の媒介、売買の委託の媒介、私募の取り扱いなど)で、既存の証券会社が行う業務です。
有価証券の販売には金融商品取引業の登録、販売員の外務員登録を要します。
また、第一種金商業の外務員は、有価証券の売買等の一定の業務に関して、
当該業者に代わり一切の裁判外の行為を行う権限があるものとみなされます。
2
第二種金融取引業
(兼業規制ナシ)(最低資本金1,000万円)
信託受益権、集団投資スキーム持分の売買、媒介などを指します。
第二種金融商品取引業にはクーリング・オフ制度 、最良執行方針の策定、公表義務等の適用がありません。
3
・投資運用業
(兼業規制アリ)(最低資本金5,000万円)
投資一任業務:投資家と投資一任契約を結び、運用会社が投資判断を行い、資産を運用します。
年金基金やラップ口座、不動産ファンドなどで広く利用されています。
ファンド運用業務:集団投資スキーム(ファンド)を運用し、投資家から集めた資金を有価証券などに投資します。
4
・投資助言、代理業
(兼業規制ナシ)(資本金要件ナシ)
投資運用業とは違って最終的な投資判断は投資家が行います。
・自主規制団体
有価証券は日本証券業協会、第二種金融商品取引業協会 投資信託や投資法人は投資信託協会という自主規制団体が存在します。
商品や販売方法、社内体制などが規制対象となりますが自主規制ですので加入は任意です。
・消費者保護について
投資口取得契約も消費者契約法が適用されますが、取消権の行使については一定の制限を受けます。

★消費者契約法:取消権は締結後5年で時効消滅する。
・電子移転記録権利(信託受益権や集団投資スキームなどをデジタル化したセキュリティトークン等)
金商法第2条第2項各号に掲げる権利のうち 「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)
に表示される場合、(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)に限る。」ものを「電子記録移転権利」という。(金商法第 2 条第 3 項)
特定投資家と適格機関投資家
・特定投資家(プロ)
オプトアウト(特定投資家ではなく、一般投資家となり、取引、保護される制度)できる投資家を指します。
特定投資家には有価証券取引時の「契約締結時書面交付義務」がありません。
特例投資家には以下のような法人が該当します。
  • 特定目的会社
  • 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
  • 資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
  • 金融商品取引業者又は特例業務届出者である法人
  • 外国法人
など
・適格機関投資家
オプトアウト出来ない投資家(プロ中のプロ)を指します。
(適格機関投資家でも「適合性の原則」は立脚する必要があります。)
※適格機関投資家の他に国、日本銀行はオプトアウトできません。
★逆に一般投資家が特定投資家となることを「オプトイン」と言います。
★プロ投資家呼称
金商法:特定投資家 不特法:特例投資家 金販法:特定顧客(書面交付義務が省略されます。)
・行為規制の適用除外
特定投資家には、次に挙げる行為規制が適用されません。
広告等の規制、取引態様明示義務、契約書面の交付、適合性の原則等、最良執行方針等、運用報告書の交付 etc...
※適合性の原則につき、適格機関投資家(原則適用)と特定投資家(原則除外)の違いに注意する必要があります。
・適格機関投資家特例業務
一定の条件を満たす一般投資家が49名まで参加できます。
一般投資家も参加可能であるため、金商法の規制が特定投資家よりも厳しくなっています。)
・公募の定義
第一項有価証券の場合50名以上に勧誘すれば公募となり、
第二項有価証券の場合は勧誘を行い500人以上が取得するときに公募となります。
・公募時の届出
①1億円以上の有価証券の発行:届出書をEDINETで提出
②1億円~1,000万円の発行:有価証券通知書を提出(EDINETの使用は任意)
・目論見書の交付義務
有価証券等を1億円以上公募、売り出しする場合目論見書を投資家に交付する必要があります。
金融サービス法
金融商品販売業者等の損害賠償の責任その他の金融商品の販売等に関する事項を定めるとともに、
金融サービス仲介業を行う者について登録制度を実施し、
その業務の健全かつ適切な運営を確保することにより、 金融サービスの提供を受ける 顧客の保護を図り、
もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。(新第一条抜粋)
★金融サービス仲介業とは銀行や保険会社に属さず金融商品の仲介を行う、ファイナンシャルプランナーや街の保険屋さんなどが該当します。
・金融商品販売業者の義務
重要事項説明義務(ただし、特定顧客の場合は適用しない
※特定顧客とは、金融商品取引法に定義する「特定投資家」を指す。
・適合性のある説明義務
・断定的判断提供の禁止
説明義務違反:事業者が損害賠償責任を負う。(刑事罰はなし)
★行為規制まとめ
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